君を選んだから
引き止めてくれたことは嬉しかった。

本当は自分も不安なんだって正直に気持ちを打ち明けてくれたことも、謝ろうとしてくれたことも。


でも、だったら、もっと大事にしてよ。

悲しませるようなことはしないでよ。

ゴネる前に、ちゃんと態度で見せてよ。


不安を埋めてくれるのは、口先だけじゃない「愛してる」しかない。

私たちには時間がないんだから.........


その日は何とか仲直りしたけど、お互いに不安を抱えているくせして上手く気持ちを表せない二人の間には、この日を境に溝が生まれた。

多分、その溝も最初は小さな溝だった。


だけど、その後も私たちは募る不安に耐え切れず、些細なことで突っ掛かっては、つまらないケンカを繰り返していた。

その上、クラスも違ければ、相変わらず、放課後も別々。

会えない時間は溝を深め、二人の距離は少しずつ遠ざかって行った。


私にはそれが怖かった。

怖かったけど、受験真っ只中の身としては、どうすることもできなかった。


匡史は寂しくないのかな。

これでいいと思ってるのかな。

イブの日に言ってくれたことは、全部、嘘だったのかな..........


考えるうち、匡史に不信感すら感じるようになった。

これじゃ、遠距離恋愛なんて無理。

こんな状況なのに何も言ってくれないのは、愛されてないからなのかな..........

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