君を選んだから
そんな中で、私にできることは一つだけだった。

一刻も早く合格を勝ち取り、進路を決定すること。

手取り早く匡史と一緒にいる時間を作るには、それしかなかった。


そう気付いてからは、不安を打ち消すためにも、ますます勉強に打ち込んだ。

何故なら、これさえ終わってしまえば、二人で過ごす時間が確保できるんだと信じていたから。


だから、本当に本当に頑張ったのに、実際にはちょっと違っていた。

2月中には進路を決め、そこからは毎日会えると思っていたら、匡史は前にも増してバイト三昧で、会えるのは休みの日だけだった。

その貴重な時間さえ、疲れているのか眠そうな顔ばかり。

今まで我慢していた分を埋めるには、何だか物足りないように感じた。


そうなると、胸の中で燻っていた不安が再び膨れ上がって来る。

小さなケンカは相変わらず続いていたし、会える時間は少ないのに、カラダを求められる割合だけは高くなった気もする。


私、本当に愛されてるのかな?

こんなんで大丈夫なのかな?

今、考えたら、そんなに大したことじゃないようにも思えるけど、遠距離恋愛に怯えていた当時の幼い私には、それらすべてが不安の原因だった。


自分も不安だって言ったくせに、どうしてそんな態度なの?

これから会えなくなっちゃうのに、匡史はそれで平気なの?

不安が募ってイライラになり始めた頃、二人の間に、また事件が起こった。

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