君を選んだから
そう思ったら、さっきまで腹を立てていたはずなのに、匡史を急にとても愛しく感じた。

匡史だって、今日を楽しみにしてたよね。

きっといろいろ準備してたよね。


なのに、何の理由もなく、約束をすっぽかすとは思いたくない。

来られないのには、きっと訳があるに決まってる。


「立原くん、今日はありがとう。でも、そろそろこの辺で。どうして来なかったかのかわかんないけど、やっぱりもう少し待って、匡史に連絡してみる。」

「あぁ、うん。.........そうだね。その方がいいかも。あ、あと、お誕生日おめでとう。」

「えっ!? うそ? 知ってたの?」

「うん。だから、今日は向井と待ち合わせしてるんだろうと思ってた。」

「.......そうなんだ。」

「じゃあ、また学校でね。」

「うん。ありがとう。」


そうか。立原くん、わかってたんだ。

わかってて、私が惨めにならないよう最後まで黙っててくれたのかな。

優しいな。


何か変な誕生日。

一緒にいてほしい人じゃない人にお祝いされちゃった。

それでも、一人ぼっちで凹んでるよりはマシだったよね。


それにしても、匡史はどうしちゃったのかな。

私のことなんか、どうでも良くなっちゃったのかな。


匡史を好きなのは間違いないと思うけど、こんな気持ちのまま上手く向き合える自信がなくなって来た。

私、これからも匡史と仲良くして行けるのかな。

本当にずっと仲良くしたいのかな..........

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