君を選んだから
ちょっと待って。

そんなこと、急に言われても無理だよ。

そうじゃなくても、今は匡史のことで頭がいっぱいなのに.........


その時、そう遠くはない距離から「カシャン」と何か落ちる音が聞こえた。

え? やだ。誰かに見られた?

嘘でしょ?

お願いだから広めないで!!


何故だか咄嗟にそう思ったのは、匡史の気持ちを考えたからなのかもしれない。

だけど、私のその願いは即座に打ち砕かれた。


駆け足で去って行く音がして、そっちへ様子を見に行った立原くんが何かを拾った。

それを見て、様子を伺っていたのは匡史だとすぐわかった。


だって、それは私とお揃いのストラップに付いているビーズの部品だったから。

匡史はいつも、それを制服のポケットから垂らしていた。

引っ掛けちゃうよって何度注意しても、まったく聞く耳を持たなかった。

私の言うことを聞かないから、最後の最後に、こんなカッコ悪いことになるんだよ。


ホントにダメなやつ。

素直じゃないし、可愛くない。


でも、それでも..........匡史が好き。

私は、やっぱり匡史がいい。


そう思ったのなら、その場ですぐ追いかけるべきだった。

この時、つまらない意地を張らず、素直になれば、匡史を呼び止めることができたのかもしれない。

< 75 / 188 >

この作品をシェア

pagetop