君を選んだから
なのに、今の場面を見られてしまったと思ったら、足がすくんでしまった。

誕生日に約束を破ったのは匡史だけど、自分がその後したことについて、言い訳をするのが急に怖くなった。


最近、わたしが立原くんに甘え過ぎていたのは事実だと思う。

優しさの裏にある立原くんの気持ちに、100パーセント気付いていなかったと言えば、多分、嘘になるし。

仮に匡史がそれを目にした上で、さらに今の告白を見てしまったのだとしたら、勘違いをされたとしても無理はない。


その一方で、約束をすっぽかされた挙句、無視され続けたことに対しての怒りも再燃した。

のぞき見するほど心配なら、どうして今まで放置してたの?

私は匡史にとって、どんな存在なの?


もはや自分のポジジョンに自信が持てなければ、話しかける勇気も出せない。

何をするのも怖い。

だけど、このままだと本当に会えなくなっちゃうよね。


匡史は私と立原くんとの仲を、変な風に誤解してしまったかもしれない。

せめて、それだけはきちんと伝えるべきだったのかな..........


後悔したくなくて、春休み中に一度だけ匡史の家に行ったけど、留守で会うことはできなかった。

その後もチャンスがなくて、結局、会わず終いのままだったから、しばらくは匡史のことを気にし続けていた。

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