君を選んだから
それでも、大学生活が始まってからは忙しさに追われ、だんだんと匡史のことを考える機会が少なくなって行った。

やがて、大人になり、さらに思い出の色が薄れて来ると、新しい恋を見つけることもできるようになった。

そして、その幼い恋の記憶は心の奥深い場所にしまい込まれ、思い出すこともほぼなくなって来ていたのに..........


今さらこんなことってあり得るのかな。

本当に、本当に、これは夢じゃないのかな!?


「あの時は、ホントにごめん。」

「ううん、もういいよ。遊園地に来れなかった理由なら、知ってるし。」

「え? マジ?」

「お婆ちゃんが転んで怪我したの見て、助けてあげたんでしょ? そのお婆ちゃんの孫がうちの高校にいたらしくて、後々、噂が広がって来たよ。何か匡史らしいなぁって、ちょっと感動した。」

「ちょっと?」

「あ、ううん。『うんと』。」

「よし。」

「え? そこ? あ、ねぇ、じゃあ、ずっと連絡くれなかったのはどうして?」

「お婆ちゃん助けた時、慌ててたらしくて携帯落とした。」

「そうなの?」

「最初の方はね。だけど、その後は、今、考えると、単なる俺の嫉妬。」

「嫉妬?」

「そう。遅れて遊園地行ったら立原と楽しそうにしてるお前見て、声が掛けられなかった。」

「それは..........。」

「いいんだ。約束破った俺が悪いんだし、お前は知らなかったんだろ?」

「え、何を?」

「あいつがずっと前から、お前のこと好きだったって。」

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