君を選んだから
それでもそばにいたい
< それでもそばにいたい >
取り引き先で、偶然、元カレと再会するなどという少女マンガみたいな出来事は、一生に一度も起こらないのが普通だと思う。
そう思えば、私の今のこの興奮状態も至ってノーマルよね。
ましてや、これからしばらく、その元カレと組んで大きな仕事を進めて行かなくちゃならないんだから。
しかしながら、今現在、私の興奮状態をさらにレベルアップさせているものがもう一つある。
いや、正確には二つなのかな。
好きな人の助手席に乗せてもらっているウキウキと、その人に取り引き先の担当者と付き合っていたことがいつバレるかどうかというハラハラ。
行きは単純に嬉しいだけだった須賀くんとのドライブが、危険なオプション付きに変わってしまった。
隠したところで、いつかはバレる日が来るのかもしれないけど、今はまだ勘弁してほしい。
私が好きなのは間違いなく隣にいる須賀くんだし、ニセ彼女を務めた日に感じたあの違和感だって、まだ何も解決していない。
匡史はあくまでも「元カレ」で、これからは仕事上のパートナー。
私がそう割り切れていたとしても、須賀くんにバレれば、きっと気を使われるに決まってる。
それだけならまだしも、周りに興味本位に話が広がれば、ややこしくなるのは目に見えてる。
せっかく手に入れたニセ彼女の座だって誰にも譲りたくないし、これはちょっと慎重にならないと。