君を選んだから
「ねぇ、ねぇ、あおい。須賀くんも。これ終わったら、飲みに行こうよ。」


しゃがみっぱなしで黙々と作業を進める私たちの上方から、突然、囁き声が聞こえた。

顔を上げると、12月だというのに額にうっすら汗を浮かべた匡史の笑顔がある。


「わっ、汗。肉体労働?」

「そう。今、納品口にあり得ない数のティッシュ届いた。あと、七星の新しいシャンプーも他の店からすげー量、来てたよ。店間振替で集めて、急遽、別チラシでも組むんじゃん?」

「へぇ、まだ聞いてない。でも、ありがとうございます。」

「いいよぉ。もう何ケース来ても、全部売っちゃうよ。」

「おっ、いいねぇ。頼んだ。」

「俺に任せろ、なんつって。」

「はははは........。ホントに売ってよ。」

「うん、もちろん。っつうことで、じゃ、また後で。陳列の続き、よろしく。」

「了解。」


何かいいな。

大変そうだけど、すごく楽しそう。

ニッコリ笑って去って行く匡史に小さく手を振っていると、いきなり須賀くんが意表を突いた質問を浴びせて来た。


「お前さ、この前、好きな人いるって言ってたじゃん?」

「へっ!? あ、あぁ、うん。」

「その人とは、上手く行きそうなの?」

「えっ? いや、どうなんだろうね。わかんない。」

「ふ〜ん.......。」


あのね、そんなの知らないって。

答えは貴方次第だから。


って言うか、なんでこのタイミングでその質問?

ビックリするじゃん、もう!!

< 90 / 188 >

この作品をシェア

pagetop