君を選んだから
ニセ彼女になってから、ちょっとは須賀くんと近付けたのかな。

さっきの言葉、須賀くんは何の気無しに言ったんだろうけど、それでもいいよ。

本当にすごく嬉しい。

好きな人にはなれなくても、かけがえのない人として認めてもらえただけで。


「そう言えば、マジで、またうち来て。お母さん、待ってるから。」

「うん。」

「陽奈さんもお前と話したいって。」

「そう、なんだ.......。」


名前が出て来ただけなのに、ドキっとしてしまう。

ステキな女性だし、仲良くしたいとは思うけど、彼女は私にとって、やっぱり妬ましい相手だ。


「うちの家族は、お前のこと、本気で彼女だと思ってるからさ。申し訳ないけど、しばらく続けてもらっていい?」

「もちろん。全然申し訳なくないし、楽しいもん。」

「ありがとう。」

「私なんかでお役に立てるなら、喜んで。」


私の勘が正しければ、須賀くんの好きな人はお義姉さんの陽奈さん。

本当は陽奈さんみたいに、須賀くんの心を独り占めしたい。


だけど、私は陽奈さんみたいにキレイじゃないし、人を惹きつけるような特別な魅力もない。

できることと言えば、ただそばにいて、支えることくらいだ。


でも、大好きだから、どんな須賀くんでも受け入れてあげたい。

許されない恋に悩む姿も、弱音を吐く姿も、みっともなくても、カッコ悪くても、私にとっては全部が愛しい。

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