Heaven~第三章~
「私、獅朗が好き」

「……そうか。分かった」


嵐はそう言うと私に背中を向けエントランスから入口へと歩き出す。


「ちょ、ちょっと待って」と私が嵐の服を引っ張り足を止めると「どうした?」と顔だけ私に向けた。


「いや、どうした?ってそれだけ?」

「何が?」

「……私、獅朗が好きなんだよ」

「だから、分かったって言ったろ?」

「分かったで終わり?私が……」


また同じセリフを吐こうとすると「どれだけ獅朗が好きなんだよ」と嵐が笑う。


「そう言うんじゃなくて、嵐はそれで良いの?私が獅朗を好きで」

「……椿が獅朗を好きなことぐらい、幸二にだって分かる。気がついてないのは本人のお前だけだ」

「え?そう、なの?」

「あぁ、でも言わないとあやふやなままだろう。で、獅朗には言ったのか?」

「言ってない。って言うか、まだ言えない」

「この期に及んでもったいぶるなよ」

「そう言うんじゃない……この件が全部終わったら獅朗にちゃんと伝える」

「獅朗に言う前に俺に意思表明か」

「まぁ……そんなとこ」

「椿が決めたならそれで良いんじゃん」

「うん」


私が頷くと「早く部屋に戻れ、獅朗が暴れ出すぞ」と笑って私の後ろにあるエレベーターに視線を向けた。


< 105 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop