エリートな彼と極上オフィス
「ごめん、俺、お前のことは…」
ためらいがちな言葉が、ずしんと心臓をえぐった。
あー来た。
これは来る。
「…お前は、なんていうか」
そういうんじゃなくて。
その声は弱々しく、かすれて震えていた。
なんでだろう、先輩のほうが泣きそう。
両手をテーブルの上で組み合わせて。
視線をうろうろ、下のほうにさまよわせて。
硬い声で。
すごく緊張しているみたいに、時折喉を詰まらせる。
こんな先輩、初めて見る。
いつも、胸がすくような自信と、はきはきした闊達な物言いで輝いている人なのに。
何やってんですか、何度だってあったでしょ、こんな展開。
もっと何気なく、流してくださいよ。
私は初心者なんですよ。
未経験なんです、こんなの。
だから。
だから。
「なあ湯田、ごめん」
先輩は、組んだ手を額に当てて。
心底悔いているような声で、きつく目を閉じて。
ほんとにごめん。
絞り出すように、そう言った。
まあ、つまりは。
私がバカだったという話。