エリートな彼と極上オフィス
コーディネーターさんと散々知恵を絞ってたどり着いた方法を説明すると、先輩は耳を澄まし、要所で鋭い質問を挟んだ。

最後には食事の手を止め、じっと考え込んでしまう。

口元に手を当てている。

こういう仕草の時の先輩は、頭の中が高速で回転しているので、話しかけても返事はないことを私は知っている。



「面白いな、これ、いつ報告聞ける?」

「それが」



来月なんです。

残念な思いでそう伝えると、先輩の顔も曇った。

私の後、この業務を引き継ぐ誰かが、その報告をする役割を担うだろう。

そっか、と運ばれてきたグラスに向かって呟く。



「お前のやってたことが、予想外に多い上に多彩だから、驚いてるよ、正直」

「みなさんがいろんな仕事を振ってくださったおかげです」

「向こうの部署とはもう、話した?」

「はい、上長になる方が一度、面談を設けてくれまして。あ、それがですね」



うふふ、と含み笑いをする私を、先輩が怪訝そうに見た。



「その方、先輩のプレゼンを聞いて、すっかりIMCのファンになったんですって、それまで得体の知れない部署としか思ってなかったと」

「ほんとかよ」

「ほんとですって」



それを聞いた時の興奮を伝えたくて、じたばたしてしまう。

やっぱり先輩には、人を魅了する力がある。

前向きで、フレッシュで、何より本人がいつでも楽しげで。

先輩は照れて、「ほんとなら、嬉しいけど」と控えめに笑った。



「そしたら俺、ちょっとは貢献できたのかな。お前とやってた役員廻り、途中で抜けちまったの、すごく悔いが残ってて」

「あれだって、先輩が軌道に乗せてくれたからその後もうまくいったんですよ、嶋さんたちもそう言ってましたよ」



やっぱり悔しかったんだ。

あまりくよくよしたことを言わない先輩が、わざわざ口に出すくらいなんだから、よほどの悔いなんだろう。

頬杖をついて、先輩が呟く。

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