エリートな彼と極上オフィス
「考えたら、あれが湯田とがっつり組んだ最後になっちまったな」
そういえばそうだ。
先輩が急な休みに入ったことで体制を変え、それを元に戻す余裕のないまま期末の繁忙期に突入してしまったせいだ。
「ですね」
「ところでお前の送別会で渡すプレゼントを、俺が選ぶことになった。リクエストあれば聞くから、3秒以内な」
「3秒!」
「3」
「待って待って、考えますから、ええと」
「2」
「手帳、はもう買ったので、服…は違うし、あとなんだろ」
「1」
ゼロ、とあっけなく終わりが告げられる。
「というわけで俺が独断で選ぶからな」
「聞く気ありました、今?」
憮然とする私を、先輩が優しく見る。
そんな顔、やめてくださいよ。
離れがたくなって、せっかくの決意が鈍ります。
「頑張れよ、ってまだIMCの仕事もあるけど」
はい、ときっぱり答えるのに力を要した。
はい、頑張ります。
そこで何ができるのか試してきます。
自分の可能性を信じて。
いただいたチャンスに飛び込みます。
先輩のいないところで。
「お疲れさま」
「あっ、お疲れさまです」
会社を出たあたりで、後ろから声をかけてきたのは榎並部長だった。
振り返った私に、にこりと目を細め、並んで歩く。
「バタバタしているんじゃないかい」
「そうですね、今日は久々に余裕ができたので、ぶらぶらしながら帰ろうかなと」
「よかったら、少しどう?」