エリートな彼と極上オフィス
えっ。
欲しいかって振ったの、ご自分じゃなかったでした?
とんでもないことを聞いた気がしたけど、先輩は申し訳なさそうにするでもなく、きっぱり言った。
「少なくとも今は嫌だ」
「いつならいいんです?」
「当分嫌だ」
なんだそれ。
「あのですねえ」
「お前の異動がさみしいだけだろとか、罪の意識を引きずってんだろとか、俺だっていろいろ自問自答して大変なんだ」
…はあ。
先輩があまりに堂々として、胸を張りかねない勢いだったので、そうですか、とこちらも飲む以外ない。
「今返事したところで、お前だって同じところが気になるんじゃないかって気がついた。そういうのがクリアになるまでは、言いたくない」
「あのー」
ちょっといいですか、と口を挟むと、突っ込まれるのを察してか、先輩がポケットに手を入れて、緊張した顔つきになる。
そんなに警戒しなくても。
「それはつまり、少しは、ええと、期待していていいってことに聞こえるんですが、その点については」
私の質問は、予想していたものとは違ったらしい。
先輩は、なんだかすごく耳慣れないことを聞かされたみたいに息を飲むと、目を丸くして。
急に腹立たしげな声をあげた。
「ねーよって話なら、わざわざこんなに悩むかよ!」
怒声に圧されて、私はぽかんとする。
「それなら前と変わらないって言って終わりだよ、そうじゃねえからあれこれ考えてんのに、なんだよお前!」
「す、すみません」
「人のこと軽いとか隙だらけとか、俺なら何言われても気にしないとでも思ってんのか」
「すみません」
「自分ばっかりだと思うな、俺だって上下したりぐるぐるしたりしてんだ、お前と同じだ!」
すみません、ほんと。
怒り心頭状態の先輩は、じろっと私をひと睨みして、帰る、と言い残すと。
踵を返して、地下鉄の入り口に消えてしまった。
呆然とそれを見送った。
一人消え、二人消え。
私はひとり、歩道に突っ立って。
こみあげるこの感情を、今夜は可愛がってあげようと決めた。
先輩、好きですよ。
ほんとにほんとに。
先輩ほど愛しい人、他にいないのです。
欲しいかって振ったの、ご自分じゃなかったでした?
とんでもないことを聞いた気がしたけど、先輩は申し訳なさそうにするでもなく、きっぱり言った。
「少なくとも今は嫌だ」
「いつならいいんです?」
「当分嫌だ」
なんだそれ。
「あのですねえ」
「お前の異動がさみしいだけだろとか、罪の意識を引きずってんだろとか、俺だっていろいろ自問自答して大変なんだ」
…はあ。
先輩があまりに堂々として、胸を張りかねない勢いだったので、そうですか、とこちらも飲む以外ない。
「今返事したところで、お前だって同じところが気になるんじゃないかって気がついた。そういうのがクリアになるまでは、言いたくない」
「あのー」
ちょっといいですか、と口を挟むと、突っ込まれるのを察してか、先輩がポケットに手を入れて、緊張した顔つきになる。
そんなに警戒しなくても。
「それはつまり、少しは、ええと、期待していていいってことに聞こえるんですが、その点については」
私の質問は、予想していたものとは違ったらしい。
先輩は、なんだかすごく耳慣れないことを聞かされたみたいに息を飲むと、目を丸くして。
急に腹立たしげな声をあげた。
「ねーよって話なら、わざわざこんなに悩むかよ!」
怒声に圧されて、私はぽかんとする。
「それなら前と変わらないって言って終わりだよ、そうじゃねえからあれこれ考えてんのに、なんだよお前!」
「す、すみません」
「人のこと軽いとか隙だらけとか、俺なら何言われても気にしないとでも思ってんのか」
「すみません」
「自分ばっかりだと思うな、俺だって上下したりぐるぐるしたりしてんだ、お前と同じだ!」
すみません、ほんと。
怒り心頭状態の先輩は、じろっと私をひと睨みして、帰る、と言い残すと。
踵を返して、地下鉄の入り口に消えてしまった。
呆然とそれを見送った。
一人消え、二人消え。
私はひとり、歩道に突っ立って。
こみあげるこの感情を、今夜は可愛がってあげようと決めた。
先輩、好きですよ。
ほんとにほんとに。
先輩ほど愛しい人、他にいないのです。