エリートな彼と極上オフィス
あはは、と笑った。

そういえば担任の先生がおっかないクラスは、生徒の結束が固かったなあなんて思い出しながら。



「頭の柔らかそうな子を、と人事に希望を出して、もらえたのが湯田さんだった。今思えば、本当にラッキーだった」

「飲み込みの速い末っ子に追われるようにして、俺たちも必死に走ったんだよ、特にこいつな」



六川さんがコウ先輩の肩を叩く。

先輩は当時を思い出しているのか、うつむいて苦笑した。






「すっかり納会の体ですね」

「月末、期末、年度末、週末が重なってるからなあ」

「来週、一度は絶対フロア間違えます、私」



新しい部署は、2階下なのだ。

あるある、と同意した先輩が、ひとつひとつデスクを確認しながらIMC室内を歩く。

壁際のひとつのところに来ると、身を乗り出して覗きこみ、あった、と壁との隙間に手を突っ込んだ。



「あぶねー、始末書かと思った」

「免れましたね」



その手にあるのは、PCに接続する通信端末だ。

持ち歩いているPCケースの中にそれがないことに気づいた先輩が、探しに戻ると言うのに私も、なんとなくくっついてきたのだった。

この部屋に、メンバーとして入るのも今日が最後だから。


壊れていないか確認するんだろう、先輩がデスクについて、PCを起動する。

その時、ふたりの携帯が同時に鳴った。

二次会の場所を知らせる、千明さんからのメールだ。



「どこだって?」

「えーと、三丁目のほうですね」

「随分遠くまで流れたな」

「金曜にあの人数ですから、確実なところに連れてったんじゃないですか、千明さんそういう情報持ってますから」



こんな日だから、社内に残っている人も少ないんだろう、全体的に、ビルがひんやり静まり返っている気がする。

無事インターネットに接続できてほっとしている先輩を見ていると、なんだかこみ上げた。

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