エリートな彼と極上オフィス
ひとりになった部屋で、ふう、と熱い息をついた。
最後の最後まで、先輩には甘えたなあ。
これが本当の、最後なんだなあ。
決まった席を持たないフリーアドレス制も、よその部署にはない。
気ままにデスクをくっつけて先輩と作業することも、もうない。
朝出社すると、他に誰もいない時でも、たいてい先輩は、私に一番近い席を選んで座った。
毎日毎日、当たり前のように示されていた、そんな親愛の印を感じることも、もうない。
その想像は、ひたすら私をさみしくさせた。
(ダメだ、きりがない)
とにかくメイクを直して追いかけようとバッグを探り、さっき先輩が書いてくれた卒業証書を見つけた。
とたん、ふにゃりとまた、めそめそした自分に戻ってしまう。
なんで先輩って、ああなんだろう。
どうしてあんなに、私の嬉しいことを心得てるんだろう。
二つに折られた紙を、なんとなく開いて。
次の瞬間、私は部屋を飛び出した。
「先輩!」
エレベーターのランプは動いていない。
だとすれば階段に違いないと、猛然と廊下を駆けた。
2階半分ほど下りたところに、先輩はいた。
私の声が聞こえていたんだろう、ポケットに手を入れて、踊り場の壁に寄りかかってこちらを見上げている。
その顔は不機嫌そうにしかめられていた。
「早えーよ」
「だって…」
先輩の目が、私の握りしめている紙に落ち、しかめ面がますますひどくなる。
そんな顔、されるいわれないですよ。
そんなだけど先輩は、私が同じ高さに下りるまで、逃げ出さずにちゃんとそこにいてくれた。
けど相変わらず手はポケットの中で、仏頂面。
目だけは私を追うくせに、何も言ってくれないので、私のほうから仕方なく口を開いた。
汗を吸ってしんなりした紙を見せる。
「これ、ほんとですか」
「疑うなら、返せ」
最後の最後まで、先輩には甘えたなあ。
これが本当の、最後なんだなあ。
決まった席を持たないフリーアドレス制も、よその部署にはない。
気ままにデスクをくっつけて先輩と作業することも、もうない。
朝出社すると、他に誰もいない時でも、たいてい先輩は、私に一番近い席を選んで座った。
毎日毎日、当たり前のように示されていた、そんな親愛の印を感じることも、もうない。
その想像は、ひたすら私をさみしくさせた。
(ダメだ、きりがない)
とにかくメイクを直して追いかけようとバッグを探り、さっき先輩が書いてくれた卒業証書を見つけた。
とたん、ふにゃりとまた、めそめそした自分に戻ってしまう。
なんで先輩って、ああなんだろう。
どうしてあんなに、私の嬉しいことを心得てるんだろう。
二つに折られた紙を、なんとなく開いて。
次の瞬間、私は部屋を飛び出した。
「先輩!」
エレベーターのランプは動いていない。
だとすれば階段に違いないと、猛然と廊下を駆けた。
2階半分ほど下りたところに、先輩はいた。
私の声が聞こえていたんだろう、ポケットに手を入れて、踊り場の壁に寄りかかってこちらを見上げている。
その顔は不機嫌そうにしかめられていた。
「早えーよ」
「だって…」
先輩の目が、私の握りしめている紙に落ち、しかめ面がますますひどくなる。
そんな顔、されるいわれないですよ。
そんなだけど先輩は、私が同じ高さに下りるまで、逃げ出さずにちゃんとそこにいてくれた。
けど相変わらず手はポケットの中で、仏頂面。
目だけは私を追うくせに、何も言ってくれないので、私のほうから仕方なく口を開いた。
汗を吸ってしんなりした紙を見せる。
「これ、ほんとですか」
「疑うなら、返せ」