エリートな彼と極上オフィス
「じゃあ俺は、お前らの破局待ちをしながら刹那のアバンチュールと行くよ」
「湯田のマンションの隣に、すげえ色っぽい巨乳のバツイチがいるけど、飲むか?」
「決して巨乳党ではないが、その話はとても気になるな」
「由美さんてバツイチですか」
いつの間にそんな情報交換を。
食堂の片隅でPCを叩きながら、先輩はにやりとしてみせた。
「俺の初対面の好感度の高さをバカにするなよ」
「だんだん下がっていくタイプですね、わかります」
「おい」
遊びに来た先輩を見るためにわざわざ顔を出した由美さんは、先輩の帰った後、あー、と何度もうなずいた。
『あー…あーあ、ああ、あー、うん』
『一音ですごいバリエーション』
『あれは大変ね、頑張ってね』
ぽんと肩を叩かれる。
えっ何が、という質問には答えてもらえなかった。
まあでも、想像できなくもない。
大変。
先輩との今後は、確かにそんな表現でくくれるんだろう。
これまでだって、よく考えたらそうだったじゃないか。
「異動しても忙しそうだね、湯田ちゃん」
「部長さんがIMC信者なので、啓蒙をと熱く託されて」
「それで広報資料を探しに来てたんだ」
「対外資料がわかりやすいのですよね、入り口としては」
なるほどね、と千明さんがにっこりする。
「広報も、PR戦略をもっと長期的な目線で立てようとしてるから、湯田ちゃんの部署に俺、かなりお世話になると思うよ」
「ほんとですか、よろしくお願いします」
「なんだそれ、面白くねえな」
「お前の素直さには頭が下がるよ」
「千明はさあ、ずるいんだよな、女心とかわかってるし、そつないし、優しいし」
それはずるいとは言わない、と即座に千明さんは反論した。