エリートな彼と極上オフィス
「先輩、よく考えてくださいよ、我々はすでに一度ですね」
「わかってる、それについては全面的に俺が悪い、だからこそ今度は、ちゃんとしたいんだ」
「いえ、そうでなく、ちなみにじゃあ、どのくらいの期間をお考えですかね」
「そうだな、半年くらい?」
ふざけるな!
という心の叫びは、崇高な決意に胸を張る先輩に、届くはずもなく。
そこを推してなんとか、と追いすがるのもあんまりだし、どれだけやる気なんだと引かれてもつらい。
別に私だって、すれば満足ってわけでもない。
でも一度きりのあの記憶は、私のほうにしかないものだから、早く先輩と同じ思い出を持ちたいのだ。
まあ、ただ興味がすごくあるってのも真実だ。
先輩のあの、艶めいて色っぽい姿を見たいだけと言っても大げさじゃない。
どう転んだって、ああ。
半年は、長い…。
「あの、じゃあそういうのなしでいいんで、泊まってったらダメですかね? 虚しいというか、さみしいんですよ、帰るの」
「無理無理、一緒に寝たら俺、絶対手出しちまうもん」
「出せばいいじゃないですか」
「なんでそんな非協力的なんだよ」
「ようやくここまでこぎつけたのに、わけわからん半年の生殺し期間を課されて、協力しろってほうが無理ですわ」
「お前のためでもあんのに、なんだその態度」
「絶対私のためじゃないでしょ、そんな自己満足の贖罪につきあわされるなんてまっぴらです、決めた、私は帰りません」
「おい、ベッド上がるな」
「私のことはお気になさらず」
「帰れっての!」
「帰りません!」
布団に潜った私を、先輩はベッドから引きはがす勢いで追い出そうとする。
何がなんでも追い出されてやるものかと、身体にぎゅっと布団を巻きつけて応戦した。
はたから見たらバカみたいであろう攻防は、ヘッドボードの上にあった小物を枕がなぎ払ったのに始まって。
ベッドカバーのどこかが裂けたような、嫌な音がするまで白熱し。
やがて、シーツの上で手と手が出会った時、終結を見た。
「ほら見ろ…」
「私の台詞です」
「だから帰ってほしかったんだよ」
途方に暮れたような声。
布団の上から私を押さえ込んだ格好で、私の手をゆっくり開かせるように、一本一本、指を絡ませて。
それとこれとはセットなんだと言わんばかりに、唇を重ねてきた。