エリートな彼と極上オフィス
先輩はきつそうに、ずっと眉根を寄せて、歯を食いしばっているような状態で。

気持ちいい、と時折耐えかねたように漏らす。

汗で額に張りついた髪をかき上げてあげると、ふと没頭から浮上したみたいに、にこっと微笑んだ。



「好きだよ、湯田」



先輩の作る、熱くうねる波に翻弄されて、呼吸すらままならない中で。

ため息みたいな返事を、必死にした。



はい、私も。

私もです。






感じたことのない振動が、どこか奥底から私を刺激する。

いや、知っているといえば知っているんだけど。

なんだっけ、これ。


ぷかりと浮かび上がった意識の中、視界に入ったのは、見慣れないような見覚えのあるような部屋の景色だった。

顔をくすぐる髪をのけようと手を動かして、腕がむき出しであることに気がついた。

というより全身、何も身に着けていないことに。


背後から腕が伸びてきて、シーツの上をまさぐる。

目当てのものがなかったのか、あれ、と小さいつぶやきと共に、肩に手が置かれた。

温かい手の心地よさに浸る間もなく、ぐえっと声が出る勢いで体重をかけられ。

私を台にして身体を起こした先輩が、上からのぞきこんできた。



「俺の携帯は?」

「たぶん…」



床の上を指さす。

そこに散らばっている服のどれかに、埋もれているはずだ。


先輩は往生際悪く、布団の中から腕を伸ばし、シャツやらパンツやらを指先で手繰り寄せると、震えっぱなしの携帯を発掘する。

ほどよく引き締まった上半身の下敷きになったまま、先輩がスヌーズをキャンセルするのを呆然と見守った。


ふと何かを発見したように、先輩がこちらを見る。

私は蒼白になって、脂汗をかいていた。

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