エリートな彼と極上オフィス
「マーケットインだろうがプロダクトアウトだろうが、どちらでもいいんだ、自ら考え描いたストーリーに乗ってさえいれば」
「ですが実際、あまりに見通しのない研究が一部で続いていることが懸念されているのも事実で」
「あそこは整理されるよ」
えっ、と全員がCMOを見た。
さらりとすごいことを聞いてしまった。
「当然ながらこの話は、社内で誰も知らない、当人たちもだ。この部屋を出たら、一切忘れるように」
「解雇ですか?」
「いや、元々あそこは、定年した元社員のわがままでつくった部署だ、再雇用契約の更新をやめ、部署を解体する」
はあ。
つくづくレイヤーの高い情報の入る部署だ。
みんなもさすがに、ぽかんとしながら聞いていた。
「これ、なんですか、美味!」
「カラスミよ、食べたことないの?」
「生まれてはじめてです」
あらま、と由美(ゆみ)さんが驚いた。
「親が魚介嫌いで」
「なるほどね、食べすぎると痛風よ、気をつけて」
「さすが和のつまみは焼酎に合いますねー」
住んでいるマンションの近くには、小さくて雰囲気のいい飲み屋がいくつもある。
由美さんは私の隣人だ。
何をして生計を立てているのか知らないけれど、目を奪われずにはいられない巨乳と、熟した美貌の持ち主。
30代半ばくらいだと思うけど、よくわからない。
「金曜の夜に近所で女と酒飲んで、青春の無駄遣いじゃないの、千栄乃(ちえの)ちゃん」
「青春ならしてますよ、最近の私の青い春っぷりったら、ハートを取り出して見せてあげたいくらいです」
「例の先輩?」