エリートな彼と極上オフィス
「あー先輩、好きです」
「残りもんでも食ったの、お前」
この時期はやめとけよ、と平然と言い、食堂のトレイを持って席を立つ。
その背中が、言葉ほどに冷静でないことが見てとれて、私はとりあえず満足した。
研修センターの小綺麗な食堂の、返却口にざっと食器を戻して、先輩を追いかける。
「合宿中に、どうやって残り物を手に入れるってんです」
「お前の部屋、あっちだろ」
「コンビニに行こうかと」
「こんな時間に?」
「まだ9時前ですよ」
人里離れたところに隔離され、早朝から研修とかやってると、感覚がおかしくなるらしい。
そっか、と首をひねりながら、先輩はなぜか一緒にエントランスを出た。
東京から車で3時間ほどの山嶺地に、会社の保有するこの研修センターはある。
我々IMCは、ここを使って初めての合宿中だ。
部署ごとの合宿というのは、社内では頻繁に行われていることで、みんな慣れたものだった。
私だけ勝手がわからず、まごまごするうちに、三泊の研修も残り少なくなってしまった。
「あれ、何も買わないんですか」
個室で食べるおやつを少しばかり調達して振り向くと、ん、と先輩が、読んでいた雑誌を棚に戻す。
そのまま店を出て、煙草に火をつけるのを見ていて、ようやく気がついた。
夜道だから、ついてきてくれたんだ。
「厄介ですねえ、先輩は」
「なんだよ、それ」
追いついて並んだ私に、優しい煙が降ってくる。
膝下丈のパンツにTシャツ。
ほぼ部屋着みたいな格好でも、つくづくかっこいい。