エリートな彼と極上オフィス
「全然痛くないのが、また怖くってさ。脚の状態なんて、とても自分から訊けなくて、説明があるまで待とう、みたいな」
「相手の方は、無事だったんですか」
「同じくらいひどかった。相手っつっても一緒に走りに行ってた友達で、仲よく同じ病院に入ったよ」
「バイクって、どんな感じの?」
「その時の俺のは、1300ccの、隼っていう」
「でっかいですか」
「でかい、かな」
「先輩がバイクって、かっこいいですねえ」
「親に泣かれて、もう乗ってないけど」
ふうん。
なんだか、少し意外。
先輩はそれこそサッカーとかバスケとか、メジャーで明るいスポーツと歓声の道を通ってきていたのかと思っていましたよ。
「おー、お前ら、どこ行ってた」
「何やってんですか」
「見りゃわかるだろ」
センターの横手に、みんながわらわらと集まっていた。
玄関から漏れる明かりを頼りに、何かしている。
「花火ですか」
「最近じゃ、自宅の庭でも許されないもんな」
私と先輩を除けば唯一の20代のメンバーが、どうだと取り出したのは、打ち上げ花火だ。
確かにこの山奥なら、火事でも起こさない限り誰にも咎められないだろう。
部署がこうした研修を行う際、内容はまちまちで、その中でも今回のIMC室の記念すべき第一回は、ハードなものだったらしい。
他社事例を各自一つずつレポートしたり、課題図書を事前に読まされ、内容について討議したり。
通常業務に加えての合宿準備に追われ、週の前半は文字どおり寝る暇もなく、合宿の中でも課題が課された。
最終日である明日には、軽いラップアップミーティングを残すのみで、ようやくの気楽な夜なのだ。