エリートな彼と極上オフィス

「行きますか、先輩」

「お前と?」

「ダメですか」

「いいけど」



その頭を、千明さんがスパンと叩いた。



「それだ、それ」

「どれだよ」

「その安請け合いが混乱の元なんだっつってんの」



先輩が、じっと私を見る。

日射しの下、爽やかな白のワイシャツの袖をまくった先輩は、文句なしにかっこいい。



「湯田、今の、冗談?」

「私はいつでも本気ですよ」



先輩とどこか行かれるんなら、それが塩素の臭いたちこめるプールだろうと、うるさいばかりのビーチだろうと、パラダイスです。

まあ、言ってみただけというのも本音ではありますが。

先輩は何か考えているのか、会社に着くまで黙ったまま。

エレベーターに乗ろうとする頃、ようやく口を開いた。



「湯田、俺、適当に言ってるんじゃないから」

「は」

「お前の行きたいとこ、行こう」



呆然とする私を見る、先輩の顔は、真剣だった。

こんな話になんでそこまでってくらい、真剣だった。


千明さんがぽかんとして、私とコウ先輩を見比べる。

どうしちゃいましたか、先輩。



「…はい」



私の返事に、よし、という感じにうなずいて、先輩は先に立ってエレベーターのドアをくぐった。

追いかける千明さんは、首をひねっている。


私も内心で首をかしげながら、踊り出したい気分と冷静な自分が戦っているのを感じていた。

ねえ先輩。


何を考えていますか?



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