エリートな彼と極上オフィス
驚くと、CMOがうむとうなずいた。



「あえて言わずにおいた」

「どうしてまた」

「そのほうが面白いかと思って」



偉い人のジョークは、往々にして笑いづらい時が多いのはなんでなのか。

はは、と私は乾いた笑い声を出し、勘弁してくださいよ、と先輩は正直にへそを曲げた。



「ま、お前たちを組ませたのは誰が見ても成功だろう、俺の人を見る目もまだいけるな」

「慧眼だと思います、実際」



取引先さんが、完全にお世辞って感じでもなくうなずく。

その時、階下から、みなさーんとマイク越しの声がした。

あっ、いけない、時間だ。



「ただいまからサプライズイベントを行います、どうぞお席にお戻りください」

「サプライズイベント?」



アナウンスに従ってぞろぞろと移動しながらも、みんな首をひねっている。

コウ先輩も階段を下りつつ、なあ、と声をかけてきた。



「何があるんだ?」

「内緒だからサプライズなわけで」

「もういいだろ、すぐ始まるんだから」

「ズルは許しません」

「お前ほんと最近、秘密主義だな!」



なんとでも言ったらいいです。

プンプン怒る先輩を置いて、私は千明さんがマイクを握る横を通り抜け、厨房へと向かった。


私が準備をしている間に、座敷の電灯が消える。

ざわついたところにすかさず、おなじみのあの曲。

誰もが心浮き立つ、“ハッピーバースデートゥーユー”だ。



「なんとお客様の中に、本日お誕生日の方がいらっしゃいます」



千明さん、居酒屋でのバイト経験があるに1000円。

すっかりお酒の入った座が、わーっと盛り上がるのが聞こえた。

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