エリートな彼と極上オフィス
どうやら、先輩のサービス精神をなめていた。

ようだ。



「お前が企画してくれたの?」

「まあ」



肩を抱かれた状態で、満面の笑みがささやく。

顔、近い、近いって。



「すっげ嬉しい」



サンキュー、ともう一度、今度は鼻先に素早いキスをすると、先輩はろうそくを一息で吹き消し、私の手からトレイを取り上げた。

食いましょ! という掛け声と共にギャラリーの元に駆け戻ると、若手を先頭に、わっと人々が群がる。


厨房に持ち帰って切り分けるつもりだったんだけど…まあいいか。

酔いもピークに達し、もうみんな、大喜びだ。



「湯田ちゃん、大丈夫?」

「はあ 」



千明さんに声をかけられるまで、私は呆然と突っ立ったままだった。

いつの間にか電気がついている。



「ごめん、あいつ、バカだと思ってたら予想を超えてバカだったみたい」

「はあ」



あ、お取り皿持ってこなきゃ。

いや、もういらないか。



「たぶん、さみしかった反動だと思うんだよね、ほら、湯田ちゃんしばらく、こっちの件にかかりきりだったろ」

「はあ」

「…まあ、見捨てないでやってよ」



はあ。

参った、脳が働かない。


あのね先輩、あの場でああするのがベストだったのはわかりますよ、あくまで盛り上がり的にはですが。

でも、あれでしょ。

あなた、バカでしょ。

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