エリートな彼と極上オフィス
わかる、と賢そうな顔が笑う。



「うちもある時期、女どもが勝手に関係悪くなって、いまだに疎遠の奴とかいるよ」

「なぜ悪化を?」

「そりゃ、あいつのせいだよ」



親指で、コウ先輩の出ていった廊下を指す。

ははあん。

やはりおもてになるのだ、先輩は。



「自覚ないけど、ムードメーカーなんだよね、あいつがやるならみんなついてくし、あいつが気乗りしないと計画も倒れる」

「いますね、そういう人」

「本人には内緒ね、あいつはそういうポジション嫌いだから、気がついたら本気で縁を切りかねない」

「しかと承知しました」



ぴっと敬礼したら、千明さんが首をかしげた。



「…やっぱちょっと変わってんね、湯田ちゃん」

「そう言われるのは、あまり好きでは」

「なんで」



渋い顔をした私を、不思議そうに見下ろす。



「調和を尊ぶ日本人だからです」

「もうちょいわかりやすく」

「人と同じでいたいのです、コモディティ万歳です」



なんでか千明さんは、しばしぽかんと私を見つめた後、あ、そう、と力の抜けたような声を出し。

頑張ってね、と私の肩を叩いて、出ていった。





「違います違います、そんな目的で社長に出てもらおうって言ってるんじゃないです」

「じゃあ、なんだよ」

「どんな綺麗事を言おうと、ブランディングはトップダウンでなきゃ進まないのです、そのために社長の熱い声が欲しいのです」

「IMC立ち上げの時に、散々インタビューしたぜ」

「だからこそです、その想いが今も変わってないと、社員みんなに言ってもらう必要があるのです、定期的に、あっすみません」


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