エリートな彼と極上オフィス
そして、実は喜んでいる私もバカだ。

だって先輩にキスしてもらえるなんて、ラッキーにも程がある。

例え好きな人じゃなくたって、あんなかっこいい人にあんなことされるチャンス、なかなかない。

いやほんと、近くで見ても男前は男前なのだ、勉強になった。


たまにお酒が過ぎると、はしゃいでいた間の記憶をなくす先輩。

今回は、どっちですかね?



「湯田、食えよ、うまいぜ」



当人はご機嫌で私を呼ぶ。

周りの冷やかしも気にせずに差し出しているフォークには、どう見ても大きすぎるクリームとスポンジの塊が載っている。

千明さんがつかつかとそちらに行き、ばくっとそれを食べた。

お前じゃねーよ、と文句を言う先輩の頭を、丸めた進行台本でスパンと叩く。



「黙れ、アホ」



先輩はフォークを握って、きょとんとしていた。



もうすぐ上期が終わる。

きっとこれが、最後の夏らしい思い出。


ま、悪くない。



でしょ?



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