エリートな彼と極上オフィス
単に、方法がわからないってだけで。

念のため確認すると、先輩は初めてそのことに気づいたみたいに、ぱっと顔を上げて。

じっと考え込むそぶりを見せてから、慎重にうなずいた。



「嫌じゃない」

「じゃ、考えましょう、なんですかね、何があればいいんですかね」

「さあ…なんか、きっかけとかとっかかりとか、そういうもんじゃねえの」

「最後までしてもダメなくせに、それ以上のどんなきっかけを作れと」

「ああいうのは、だって、ただのノリだろ」



うわあ…最低。

一歩引いた私に先輩が、違うって、と慌てた様子で言う。



「対象じゃない奴と何したところで、気持ちが動くわけじゃねえって話だよ」

「彼女たちは、動かしたくて身を任せたんだと思いますけどねえ、わあ気の毒ですねえ」

「少しは俺の味方しろよ」



怒ったように訴えてくるんだから、あきれてしまう。



「どの口が言いますか」

「お前には俺、手出してないじゃん!」

「出さなきゃ許されるってもんじゃないでしょう、女の敵」



なんだと、ともうただの言い争いになってきた。



「俺は元からこうだよ、嫌なら俺なんかやめればいいだろ」

「それができたら苦労しませんよ、それとこれとは別なんです、残念ながら」

「じゃあ俺を罵倒したって始まらないだろ、見逃せよ」

「ちょっとは向上心持ってください」

「俺に厳しすぎだろ!」

「ちやほやされたいなら、中川さんといればいいでしょ!」



言ってから、はっと我に返った。



「中川?」



怪訝そうな顔に、焦る。

うわ、何を言ったんだ私、バカみたい。

慌てて手を振って否定した。



「すみません、なんでもないです」

「なんで中川が出てくるんだよ?」



なんでもないって言ってるじゃんかあ。

自分でもわかるほど真っ赤になった私を、しげしげと先輩が覗き込んだ。

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