初恋
初恋
踏み切りの向こうに海が見えていて、その海の向こうで生まれた風が遮断機を通り抜けて私の所まで届きました。


ゆるやかな風が私の頬を撫で、私はその風の香りを胸いっぱいに吸い込みました。


初秋の風は暖かで、私はしなやかな背をさらにしならせてその時を待っているのです。



「・・・・・・あぁ、今日もいらしたわ・・・」

私の呟きが消えないうちに、あの方は私の傍にしゃがみ込みました。


「おはよ」

低い声でそうささやき(私だけに聞こえるような、小さな小さなご挨拶です)背中の毛並みをするすると撫でました。


私はうっとりと目を閉じました。

間違いなく私は今、地球一幸せな猫なのです。


「じゃあな」

私の背中から、愛しい体温が離れていきます。
目の前の踏み切りを緑色の車輌が通りすぎました。


・・・明日もきっといらしてね。



今、私はとても幸せなのです。


~告白~
恋することを、覚えたのです
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