徒然なるままに、短歌部
残ったもう一人の先輩はというと、「後輩想いのいい奴だねえ」なんてのんきなことを言いながら、煙草に火をつけている。
「ちょ、ちょっと先輩!! こんな時でも煙草ですか?」
「こんな時だからこそだよ。落ち着かないと、思考力が鈍るからねえ」
「先輩には、危機感ってものはないんですか!?」
すると、サラダ先輩は、眉間を親指と人差し指で押しながら言った。
「ないわけじゃないさ。でも、冷静でないときこそ、見誤るんだよ。なあに、最悪、そこの窓からジャンプすれば、助かりそうじゃないかい? 坊ちゃんだって、小学校の二階からジャンプしても、足を挫いただけだったし」
「先輩なんかと心中する気はありません!! 帰ります!!」
私はカバンを持って、教室を出ようとした。いや、出ればよかったのかもしれない。
ただ、そうできなかった理由は、私が扉に手をかけた時、サラダ先輩が言った一言のせいだ。
「万智ちゃんって、きっと、詐欺とかに引っかかりやすいタイプなんだろうねえ」