徒然なるままに、短歌部
メールとLINE……そんなの決まってる。
「もちろん、LINEですよ。当たり前じゃないですか」
「なぜLINEなんだい?」
「そりゃだって、みんな使ってますし、メッセージも読みやすいですし、通話もできますし……」
そんな当たり前のことを聞いて、当たり前の答えを返しただけなのに、サラダ先輩の向けた煙草は口に収まらない。
「それだよ。それが答えさ」
それが答え?
「LINEの方がメールよりも使いやすい。機能も充実している。だからLINEを使う。文芸部と短歌部の関係だって同じじゃないかい? 短歌は確かに素晴らしい。百人一首なんて最高傑作だよ。でも、それは昔の話。今は、ラノベやケータイ小説が出てきたおかげで、小説の方が人気がある。万智ちゃんもそういう理由で文芸部に入ったんじゃないかい?」
的を射ていて、返す言葉が見つからない。中学の時は連絡手段と言えばメールだった。それがスマホの参入によって、LINEへと移行した。これだって本当はおかしいんだよねー。メールの方が先にあったのに、今ではLINEのついでみたいな扱いになっている。
現に私は自分のメールアドレスを100%覚えている自信がない。
「時代の流れには逆らえないのさ。短歌部より文芸部の方が需要があった。それだけさ」
そうサラダ先輩は、しみじみ言った。
「でも、古き良きものだってありますよね? それなのに、なんでサラダ先輩は、短歌を、短歌部を守って行こうとしないんですか? 広めないんですか? 詠まないんですか?」
「だからそれはさっきも言っただろう? 俺は短歌は好きじゃない。素晴らしいとは思うけどね。でも、好きじゃないのが本心さ。好きじゃないものを君は広めたり、守ったりできるかい? そうだねえ、例えば、ここが短歌部じゃなくて、競馬予想部だったとする。その部長は万智ちゃんだ。さて、万智ちゃん。君はそんな競馬予想部を広めようとするかい? 守っていけるかい?」
「それは……」
「もちろん、そんなことは無理だ。好きでもないものを広めたり、守ったりなんてそんなことはできない」