徒然なるままに、短歌部
「短歌部は文芸部の墓場なんて言われてますけど、文芸部は短歌部の生まれ変わりですよね?」
それだけ聞くと、戸松先輩は渋面を浮かべた。
「おかしなことを言うんだな。芥川龍之介を君は知らないのか?」
おかしなことを言うのは、戸松先輩の方だと思った。もちろん知っている私は頷いた。
「つまり、彼が生きていた頃よりもずっと前から文学というものは確立されていたんだ。サッカーが日本に広まるよりも前からね。短歌ももちろんそうだが。君は、当時の高校生だとして文芸部が本当になかったと言えるか? 世間に浸透していなかったと、そう思うか?」
首を横に振った。
「それが答えだ」
「でも、サラダ先輩は確かに言いました。『文芸部は短歌部の化身だ』って」
「じゃあ、裃くんが勘違いをしているか、或いは……嘘をついているかだ」
私は、戸松先輩の机を思いっきり叩いた。
「サラダ先輩はそんな人じゃありません!」
周りもざわざわとしている。賀来先輩もだ。
さっきよりも大きく「おっほん」と再び咳払いをすると、元の静けさに戻った。