徒然なるままに、短歌部
「とりあえず、僕の見解はこうだ。文芸部は短歌部の生まれ変わりなんかじゃない。だが、文芸部から短歌部に派生していったのでもない」
「それってつまり、以前は、短歌部も文芸部と同じように肩を並べてたってことですか?」
「そうだ。それが裃くんを勘違いさせていると思う要因だ。そして、嘘をついているとするなら、裃くん自体に短歌部へ何かしらの思い入れがあるからだろう」
短歌部への思い入れ……。
「短歌部を文芸部の短歌部署としてじゃなく、正式な部として認識している、しようとしていると言ったところだ。まあ、見栄だね」
盲点だった。そうだ。その可能性だってあった。
短歌に直接興味はなくても、短歌部にバックグラウンドのようなものがあったとしたらどうだろう。いや、絶対にある。戸松先輩は言ったのだ。
文芸部から短歌部へ派生したのではない。と。
つまり、短歌部は昔からあった。そして、それが廃れてしまった。サラダ先輩よりも前に短歌部員がいたとしても、いなくても。確かに瀬花高校にはあった。
「これでもまだ裃くんが文芸部を辞めた理由を知りたいなら、裃くん自身から聞くことだ。これは裃くんの問題だからね。しかし……」
戸松先輩は、肘をついて頭を抱えた。
「短歌部が文芸部と肩を並べていた時代。それを知ることに対しては僕は止めない。短歌部にいる以上、君には知る義務がある。まあ、文芸部の僕がそれについて義務付けるのもおかしな話だね。訂正しよう。知っておいた方が得策だろう」
短歌部が文芸部と肩を並べていた時代……つまり、短歌部のバックグラウンド……。
「教えてください。短歌部のバックグラウンドについて……」
しかし、戸松先輩は、それについては語ろうとしなかった。
代わりにこう言った。