徒然なるままに、短歌部
「立ち話も何だからとりあえず、喫茶店にでも行きましょう。あそこのコーヒー結構おいしいのよ」
そう言って、私はカナ先輩に連れられてコーヒーが美味しいという喫茶店に来た。
「ここよ。『レインリリー』。クラスメイトの実家なんだけど、結構いけるのよ」
「はあ……」
カランコロンと音を立てて、中に入ると、レトロな雰囲気で、ジャズなんかを流している。
「いらっしゃい」
カウンターの奥から渋いおじさんが出てきて、私たちは軽く会釈して、四人掛けのテーブルに腰掛けた。
「どう? いい雰囲気でしょ?」
カナ先輩の言うように落ち着く。短歌部の部室とはちょっと違った感じの落ち着いた感じで、何時間いても飽きそうにない。
「はい、おまちどーさん! コーヒー二つね!」
さっきの渋いおじさんがコーヒーを持って来て……くれなかった。というのも、声が明らかに違う。イントネーションまでも違う。
驚いて顔を上げると、そこにいた人は、まるで、賀来先輩を思わせるようなほどチャラチャラとしていて、このレトロな雰囲気の部屋にあるレコードプレイヤーからレゲエが流れてきそうだ。
「ありがとう、加持(かじ)」
カナ先輩はそのチャラ男を『加持』と呼んだ。