徒然なるままに、短歌部
「じゃあ、あの時、見せられた短歌は一体……」
私のつぶやきに二人が首を傾げる。
「私、短歌部に入ってすぐの時、サラダ先輩から自分が詠んだっていう短歌を見せてもらったんです。でも、サラダ先輩は短歌を詠んでないんですよね?」
加持先輩とカナ先輩が顔を見合わせる。
「万智ちゃん、それってどんな短歌だったか一首でも覚えてる?」
「いや、覚えてないですけど……確か、冊子になってました。題名は確か……」
「『抗い』かしら?」
カナ先輩が言った「抗い」という響きに私はなぜか懐かしい感じがした。
「そうです。『抗い』です。抗菌作用の『抗』って漢字に送り仮名で『抗い』ですよね?」
カナ先輩が頷く。しかし、顔は険しい。
「万智ちゃん、もしかしたら裃は、何か重要なことを知っているのかもしれないわ」
「重要なこと?」
今度は私と加持先輩が顔を見合わせた。
「おそらくだけど、裃更太は、私たちも知らない短歌部の秘密を知っている」