徒然なるままに、短歌部





長い廊下を歩き、客間に通され、私はカナ先輩に聞いてみた。




「あの高そうなスーツを着たサングラスの方たちは、カナ先輩のお兄さんですか?」




「いやいや、あの人たちは……」




カナ先輩が顎に手を当て、何かを考えている。言い訳だろうか……。




「そういえば、生まれてから一度もあの人たちが何者のか考えたことなかったわねー」




と、とんだ答えが返ってきた!




「どういうことですか、それ! 知らない人……し、知らない人が家にいて、ほら、縁側に座って煙草吸ってるし……普通じゃないですよ、絶対!」




「オーバーね、万智ちゃん。ドラマとかでよくあるでしょ? お盆やお正月に大勢人が集まってお酒飲んだり、ご飯食べたり。あれと一緒よ。私の家ではそれが日常茶飯事ってだけよー」




「いやいやいや、全然一緒じゃないですよ! それは親戚だからですよ! あの人たち全部親戚ですか? 『カナちゃん大きくなったなー』とか言って高い高いとかされますか? 『お小遣いあげようねー』ってなりますか? お風呂入れてもらったことありますか!?」




「親戚? え? あのお盆やお正月にみんな集まってるの、あれ親戚なの?」




「そうですよ! それにあの掛け軸、普通じゃないですよ!」




「『任侠』とか『仁義』ってやつ?」




「どう見ても普通おかしいですよ、極道ですよ!」




「普通、普通って、一体何なら普通なの?」




「あんな掛け軸がかかっていないことです!」




カナ先輩に小声でそう訴えるも、当の本人は、首を傾げてばかりで、きっとカナ先輩の中では、自分の家が極道なんて認識はこれっぽっちもないんだろうなと思う。




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