徒然なるままに、短歌部
『抗い』 其の肆
涙が頬を伝って、ゆっくりと。畳を濡らしている。
俵というのはお母さんの旧姓。名前は美佐枝。間違いない。
お母さんが私と同じ瀬花高校に通っていたなんて。
お母さんが短歌部の部長をしていたなんて。
お母さんが責任をとるために自主退学をしていたなんて。
私はお母さんのことを何も知らなかった。
短歌をこんなに愛していたなんてことも。
「万智ちゃん?」
カナ先輩が私を優しく抱いてくれる。私は泣かないように、泣かないように必死に涙を堪えようとした。笑顔で、おじさんにありがとうって言わなきゃ。
ダメだ。うまく笑えないや。