徒然なるままに、短歌部





帰り道、私は何となくふらっと、喫茶店『レインリリー』に立ち寄った。




「いらっしゃい」




渋いおじさんがお皿を拭いているだけで、中はすっからかんだった。これで食べていけるのが不思議なほどで、でもなぜだろう。短歌部の部室と同じ匂いがする。




コーヒー? いや、コーヒーもそうだけど……ああ、煙草か。




私はカウンターに座り、コーヒーを注文すると、ノートを取り出し、肘をつきながら短歌を続きに入った。




今のこの状況を何とか短歌にできないものか……。




「おー? 何々、『空回りしてばかりだったトリックに 私の心は夏模様』って井上陽水か!」




誰かに頭を叩かれる。この声に私は聞き覚えがある。




「加持先輩!」




「よっ、コーヒーお待ち!」




加持先輩は私にコーヒーを置くと、そのまま横に座って煙草を吸い始めた。しかも、制服で。




別に驚きはしない。サラダ先輩で馴れている。





< 224 / 266 >

この作品をシェア

pagetop