徒然なるままに、短歌部
私は晴さんから手渡された住所の場所に行ってみた。隣町の河川敷沿いのそば屋とうどん屋が並んだおかしな場所を抜け、赤い大きな橋に差し掛かる。
「えっと、ここを左……」
に進むと、そこにセンチュリーの停まった大きな家があった。表札には……えっと、なんて読むかわからない。
そこにあったノッカーを二度鳴らすと、中からメガネをかけた50歳くらいのおじさんが出てきた。
「あの……コバさんですか?」
晴さんから聞いていた『コバさん』という名前はこのおじさんのことらしく、おじさんは「ああ、すると、君が万智ちゃんだねえ」と言って、私を家の中に招き入れてくれた。
晴さんの家も大きかったけど、それの三倍は豪華で大きいリビングにトイプードルが二匹、私を歓迎するかのように飛び跳ねている。
「こら、ミー! ケイ! お姉ちゃん嫌がっているだろう?」
おじさんにそう呼ばれたトイプードルたちは、「ワン!」というより「OH!」に近い鳴き声で私を解放してくれた。
「すまないねー。なんせ、編集以外で来客があったのは久しぶりだから、嬉しいんだろう」
「可愛いワンちゃんですね」
おじさんは私にコーヒーを淹れてくれた。私にとって今日で二杯目のコーヒーだった。