徒然なるままに、短歌部
「まず、主人公の女の子。キャラがいいよね。小説で主人公を一人称で書くとき、大体が受け身になるんだけど、どちらかというと、後から雨宿りをしに来た男の子の方が受け身になっている。積極的な主人公が活躍する作品は、見るものを引き付けるからね。大胆さがあっていい」
それから、おじさんは続けた。
「セリフも単調じゃない。ただ繋げたようなセリフじゃなく、意味があって、しかもSF染みている。深みがあるんだよ。こういうセリフを惜しげなく使う日本人作家は僕が知る中で一人しかいない。賛否はわかれるけれど、僕は好きだね」
さらにおじさんは私を褒め殺していく。
「何といっても、繊細な描写がいい。情景が浮かんでくる。説明染みていて、読み辛いと批判する人もいるが、そこが純文学であって、ラノベやケータイ小説にはない、素晴らしい表現だと思う。僕に教えるところがあるどころか、僕の方が教わることが多いよ」
戸松先輩は描写については褒めてくれた。
サラダ先輩は短歌向きだと言ってくれた。
おじさんはここまで褒めてくれる。
よくよく考えると、小説を誰かに見せたのは、戸松先輩とサラダ先輩、そして、おじさんだけで、それぞれ感想が違うってことがわかった。きっと、晴さんに見せると、また違う感想がもらえるに違いない。