短編集
嘘だけど
4月1日。
「ねーねー彩華先輩!!」
「ん?なんだい竹本くん」
高校2年生になった後輩の竹本くんと大学生になったあたし。
「実はですね。今日、僕の家が爆発しました!!」
「…………」
「嘘だけど」
そう。
今日はエイプリルフール。
「僕、この前の模試でまさかの全国1位だったんですよ!!」
「…………」
「嘘だけど」
この前、学年ビリだと言いながら落ち込んでいたじゃないか、と心の中で叫ぶ。
「ねえ、竹本くん」
「はい?」
今度はあたしの番。
「好きだよ!!」
「………え!!」
「…嘘だけど」
そして、彼の目を見てあたしは頬を赤くしながら、もう一度言う。
「…嘘だけど」
好き、の嘘のウソ。
――…つまり素直に言ったらどうですか?