甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「昔から、変わらないなー、あいつ。強情だからな」
「そのようですね」
適当に合わせるけど、何が言いたいんだろうか。
「……あいつ、まだ結婚とかしてない?」
「え? あ、はい」
「そっか。ごめんね。急に声をかけて。もしかしたら、病院で会ったりすることもあるかな? 見かけたら声でもかけてね」と行ってしまった。
「なんすか。BLですか」
後片付けをしながら中村に先ほどの出来事を報告すると、真顔でそう言われた。
「ちょっと待って、どうしてそうなる」
「だって課長、すっごい冷たかったじゃないすか。あれはたぶん過去に天野先生が課長に片思いしてたんすよ。で、告白したら拒絶された。そして海外へ逃避行。
帰ってきて久しぶりの再会だけど、課長はやっぱり受け入れられない。でも未だに好きだから、課長が結婚しているのかと確認した……切ないっす」
「……中村に話したのが間違いだったわ」
呆れると
「え、なんでですか?」
「いや」と言いながら、そういえば中村が天野先生のことを気にかけていたときに、課長がやめとけと言っていたことを思い出した。
あんな風に止めるには課長なりに理由があったんだろうと今にして気づく。
BLかどうかは知らないけどさ。
そこで課長の姿がないことに気がついた。