甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

課長の家で朝食を


明朝、目が覚めスマホをタップする。
メッセージアプリを確認すると、ついさっき課長がメッセージを送ってくれていた。
『上着、気づかなくて悪かったな。明日、会社に持っていくけど』
荷物になるのは悪いと思ったけど、課長がいいならお願いしようかな。
『こちらこそ、すみませんでした。明日、お願いします』
軽く準備体操をする。
髪をポニーテールに結び、ランニング用のウェアに着替えた。

ぐっすり眠れたのが良かったのか、身体が軽い。
河川敷を走っていると、今日は自然と距離が伸びる。
鳥のさえずりが聞こえ、空がだんだんと明るくなる。家を出るころは肌寒く感じていた空気や風も、段々と心地いいものに変わっていく。
少し荒くなっていく呼吸や心臓の音が身体を支配していくと、自分が本当にここにいるような気がした。

だけど、ふと足を止めてしまった。
階段を昇ろうとする男性の後ろ姿に見覚えがあったからだ。
「……課長?」
呼びかけると振り向いて、表情ひとつ変えることなく
「お前、本当に走ってるんだな」
「は……走ってますけど。なんですか。もしかして課長、私を待ち伏せですか」
冗談のつもりだったのに「薄気味悪い」と不機嫌そうに答えた。
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