甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

課長の提案に私は、行きますと返事をしていた。
なんというか、幼い頃、学校帰りに会った友達に家で遊ぼうと誘われ着いていった感覚に近い。
おまけに汗がひどかったので、コンビニに寄り下着を新調し、課長の家で着替えとシャワーまで借りウェアも洗濯してくれた。
不思議とそれをすることに、抵抗を感じさせない安心感が課長にはある。

課長のマンションはあまり物を置いていなくてシンプルだけど、ダイニングに置いてあった小さなサボテンが愛らしくて目を引いた。

「はいよ」と手際よく課長はオムライスを作るとテーブルに置いた。
「お母さん」
「お前、昨日からそればかりだな」
「だって、朝食作ってもらうのって久しぶりだし。あ、きりたんぽ作ってもらうのは初めてでした」
「いいから、黙って食え」

課長は、グラスについだお茶を飲む。
私がシャワーを借りてる間に軽く食べたらしい。
いただきますと一口頬張ると、少し懐かしい母のオムライスの味にほんの少し似ていた。
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