甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「まあ覚えてなくてもいいけど」
「……でも、あのときも感謝の気持ちでいっぱいだったから、そういうことが言えたのかもしれませんね。父もそうですし、力を貸してくれた親戚とか、課長や若槻の顔を見たときも、なんか心からほっとしたことは覚えてます。そういうことを感じられたから、言えたのかもしれないですね」
息をついたら、笑みが溢れた。
「ていうか、このプリンめちゃめちゃおいしくないですか。どこのですか?」
「ああ、近所にあるんだよ。帰り、教えるか?」
「はい。ていうか甘いの嫌いなのにプリンが別腹の意味が未だに分かりません」
「はいはい」
「それにしても課長、家、綺麗ですね。まあそんな気はしましたけど」
「物を置くのが嫌いなんだよ。掃除面倒だし」
「へえ……あっ」
となべっこ遠足でのことを思い出した。
「なんだよ」
「課長、中村がドクターに恋しないようにって言ってた理由がわかりましたよ。お友達だったんですね、天野先生」
天野先生という言葉に眉がピクリと反応した。