甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「ああ、あれか」
「悪いお友達だったんですか? 中村が好きになったら大変になるような」
訊きながら、きっとお前には関係ないと言われる気がした。
だけど一点を見つめてから「いい、悪いで判断してたら、よくわからなくなるな」とだけ言った。

「誰かにとったら悪いだろうし、誰かにとったら最良の選択だったんだろうし。ただもう、あいつの顔は見たくないと思っていた。それだけだ。実際、今のあいつがどんな風になっているかわからないし。まあ、昔のままなら、最悪だろうな」
「意味がわかるようで、わかりません」

課長が以前、私に言ったことを自虐的に呟くと、どうしてか胸に苦しみを覚えた。

「って今、私のことをおやじって言いましたね。え? ナチュラルですか? わざとですか?」と尋ねると意地悪そうに笑って、プリンの容器を片した。

「課長め……あ、そういえば、課長の家のベランダ広いですよね。外から見て思ったんですけど」
「ああ、無駄に広いな」
「見ていいですか?」
「なんもねーぞ」

リビングを抜けてベランダに出ると風が頬を撫でた。
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