甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「気持ちいい。いいですね。なんか夜風を浴びながら、ここに椅子を置いて軽く一杯飲みたいです」
「そうだな。お前、酔うとベランダ好きだもんな」
「え?」と言ってから、我が家に課長が来たときに酔ってベランダに誘ってキスを迫った自分を思い出し、一気に恥ずかしくなる。
「あ、あれは、別にその……その」と言い訳を気にする様子もなく「七輪でも置いて、小千谷の好きなイカでも焼くか」と楽し気に言うので、心がふんわりした。
「いいですね。イカ最高です。じゃあ私、美味しいお酒を背負って来ますね」
「鴨がネギを背負って来るみたいだな」
「え、その例え、もしや私を食べる気ですか?」
「いや、遠慮しておく。腹壊しそう」
「……ですよね。ていうか、焼き鳥もいいですね」
「おやじは酒と食べ物のことばっかりだな」と課長は笑った。