甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

深まる疑惑


辻褄が合う。
とまではいかないけど、現に課長に誕生日プレゼントを渡したり、昔の恋がなんちゃらみたいな子が社内にいることは確からしい。
それが若槻じゃないとは言えない。

若槻は入社してからずっとここだから、課長が他の営業所にいたときは会いようがない。
なら、それよりずっと前ってことか。
昔の恋。
学生の頃、課長が心を開いた子がいたって言ってたっけ。それが若槻だったとか。いや、当時は今より歳の差を感じるか。
7歳ほど違うはずだから。

「おい」
「うわっふ」
後ろから課長に声をかけられ、変な声をあげてしまった。脳内推理に没頭していて完璧、変な世界にいたせいで気がつかなかった。

「うわっふじゃねーよ。さっきから何度も呼んでたんだけど」
「あ、はい、すみません。右から左に聞き流しておりました」
「それよりこの前頼んでいた研修資料なんだけどな」
「あ、はい」

そのやりとりを笑ってみている若槻はいつも通りなのに、変なフィルターがかかるとなんだか気まずくて仕方ない。
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