甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
家に帰り「なんか疲れた」と言いながら、靴を脱いだ。
「あっ、課長の服どうしよう」
課長から借りた服を返そうと思っているのだけれど、社内で堂々と渡していいものかわからず紙袋に入れたままだった。
なんとなく取り出し、広げる。それをギュッと抱き締めると、安心感に包まれるようだった。
何をしてるんだとハッとして、たたみ直す。課長にメッセージを送ってどうするか決めることにした。
『課長、お疲れ様です。この前、借りてた服を返したいのですが、家に持って行ったほうがいいですか?』
『別にどっちでもいいよ。任せる』
「任せるっていちばん迷うやつだ」
呟いてソファに寝そべった。天井を眺めてたって答えは出ない。
「会いに行ってみようかな」
勢いよく身体を起こすとコートを手に取った。
インターフォンを鳴らすと課長が顔を出した。
「お前、来るなら一言いえよ」
「え、あれ? 言うの忘れてました?」
「まあいいけど」
「はい、これ、ありがとうございました」
「おう」
三和土にトープ色のパンプスがあって、一気に血の気が引いた。