甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
「随分聴きいってんな」
歌が終わり、ラジオのパーソナリティが話し始めると課長は口を開いた。
「あ、はい。この歌好きなんですよ」
「へえ」
「この曲、聴くとなんか恋したくなるんですよねー」
と、気づいたら呟いていた。またバカにされるに違いない。
「恋? なんで歌なんかで恋したいという気持ちが湧くんだ」
さっぱり理解できないと言うようにそっけなく言う。予想通りだ。
「……課長にはわからないですよね。理屈じゃないですから」
「理屈で言えないことがあるのか」
「……いや、そんなに突っ込まなくていいです。聞き流してください」
「まるで恋してねーみたいだな」
課長はたぶん私に彼氏がいることくらいは知ってるんだと思う。
それに対しての突っ込みなんだろう。
たぶんきっと終わりました。
そう思ったけど、「そうですね」と短く返事をした。